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松の司 蔵元ブログ

『土から考える松の司』 〜第4話



〜プロローグ〜

これまで自分たちが造っている松の司というお酒について、そこに貫通する“味わい”や“松の司らしさ”といったものを肌感覚で分かってはいても、あまりはっきりとした言葉で表現して来れなかったように思います。

それらを完全無欠の言葉で表現するのは難しいですし、おそらく不可能だとは思うのですが、松の司というお酒を構成するいくつかの要素を深く掘り下げることで、そこに宿る輪郭や独特の空気感をお伝え出来るのではないか?そんな思いからスタートした『○○から考える松の司』。

前回の『水』に続き今回は『土』について掘り下げるべく、「土壌別仕込シリーズ」を軸に当蔵の石田杜氏へのインタビューを行いました。その模様を5話に渡りお届けします。どうぞお楽しみください。



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松瀬酒造 杜氏 / 石田 敬三




弓削から学ぶ

ーーそれにしても今年は思いがけず弓削(地区)が個性的な仕上がりでしたね。


石田
うん。そう言うことが出てくるんやろうと思う。今まではこっちが想定するだけやったから、ただの二元論やん、“砂利”なんか“粘土”なんか。

最初言ってたみたいに耕作土のその粒子の大小。それとその混ざり具合の割合やって話しなんやけど、弓削っていうところ(土壌:粘土+砂)が意外に・・・、この前の洪水あったみたいに、元々琵琶湖の底やったとこやし、川の浸食も結構受けてるところやから、粘土が流れ込んでたって耕作年数が長くたって、結構軽いんやんな。


ーーそうなんですよ。近くの橋本(地区)とか林(地区)とかから想定したイメージと違うんですよね。面白かったんですよね。


石田
これが(土壌別仕込を)長いことやればもっと違う人が違う切り口で見つけられることがあると思うねん。

ほんなら、ブルゴーニュの“グランクリュ”と“1級”の格付けがあって、その年単年で見たら1級がグランクリュを超えることもあるし。だから最初にそこに入植したもの凄くテイスティング能力のある人が「こっちグランクリュ、こっち1級」って簡単にうねで分けれるかって言ったら無理やんそんなん。

日本酒なんかもっと無理やから。やけどきっと米でも村ごとやったら瞬間風速的にはきき酒で判断出来ませんでした。だから(個性が)無いっていうのでも無い。今年は差がありませんでしたって言うから差が無いっていうわけでも無い。

で、何人もの人が何人も同じ眼差しでもって、ずーっと続けて行ったら、実は動かんもんがあるはずやから、それのことを文化とか土地の個性、残すべきその土地の表現、キャラクターって言って良いんやと思う。


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石田
だからある日突然、誰かがそういうコンセプト見つけました。発見者です。全部分かりますよって言うて、実際分からへん時もあるけどまぁ大体やれば分かりますって、そんなんじゃ分からへん。

分からへんねんけど・・・、そこに何かは必ずあって、それは何年間、15年やってもあるって信じられることがあるから。その細かいことを次の経営者の人もやって、それを愛でて楽しむっていうのが文化やし、それがブランドやと思うなぁ。


ーー木の彫刻じゃないですけど、ずーっとちょっとずつ触っていったら、その中に埋まってる形が見えて来て、なるべき形になるような。


石田
うん。弓削の話なんか全くそうで、最初の想定あるやん。それは自分なりの方法論でシンプルに考えて、みんなに伝えていって、やってみて、新たなとこを造ってみたらそれだけじゃないなってものが出て来るわけやん。じゃあこれは何じゃろな?って。

また3年くらいやったら、それが弓削だけじゃなく林(地区)もそうやわ、「あっじゃあ川が近いからか」とかあるやろうし。林には無いけど弓削だけにあるんやったら、洪水とかで水に浸かって表面が洗われてんねやなって。それで表面の肥料具合の違いが大きいんやってなったり。

もう3年やっただけで弓削がちょっと違うねって出た時点で、物語が1ページ増えるわけやからなぁ。


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積み重ねた文化の上に立つ


石田
だからさ、いきなりそのワイン好きの人とかがブルゴーニュと比べてどうとかって話になりがちなんやけど・・・。ブルゴーニュは何千年もそれ(土地を見続けることを)やって、それだけの市場価値があって、プロモーションもやって、(確かにそこに)“あるもの”ってなってるやん。

で、みんなが“分かってるもの”ってなってて。じゃあそれが何の上に立ってっるかって言ったら、プロモーションと歴史、その歴史の上に今立って楽しんでるから、それが文化やん。あっちはもう2,000年近くやってるからなぁ。こっちは(山田錦を)栽培してるところで40年くらいやんか。だから今はこれで十分なんやと思うよ。


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石田
現にブルゴーニュでさえコート・ド・ニュイとボーヌ(=南北に隣り合う2地区)さえそんな分からへんよ実際。やけどしゃべる時はその違いがあるように、もう臨済感としてあるのはこれ文化やんなぁ。ブランドやんなぁ。


ーーみんなが信じてることですよね。


石田
もう「ブルゴーニュ」「テロワール」ドーン!ってあるやん。

これは絶望とか失望して言ってるわけじゃ無くって、味覚のウェイトだけに固執して間違って捉えられるのは生産的では無いから・・・、焦らんと、今はそういう「弓削違いましたね」っていうようなことを積み重ねて行くべきなんやろうと思うけどなぁ。

もしかしたらやけど、10年くらいして「粘土っていうんじゃ無かったね」っていうのでもそれはそれで良いんじゃ無いかなって、それで十分。



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# by matsunotsukasa | 2020-09-29 11:46 | 日記 | Comments(0)

『土から考える松の司』 〜第3話



〜プロローグ〜

これまで自分たちが造っている松の司というお酒について、そこに貫通する“味わい”や“松の司らしさ”といったものを肌感覚で分かってはいても、あまりはっきりとした言葉で表現して来れなかったように思います。

それらを完全無欠の言葉で表現するのは難しいですし、おそらく不可能だとは思うのですが、松の司というお酒を構成するいくつかの要素を深く掘り下げることで、そこに宿る輪郭や独特の空気感をお伝え出来るのではないか?そんな思いからスタートした『○○から考える松の司』。

前回の『水』に続き今回は『土』について掘り下げるべく、「土壌別仕込シリーズ」を軸に当蔵の石田杜氏へのインタビューを行いました。その模様を5話に渡りお届けします。どうぞお楽しみください。



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松瀬酒造 杜氏 / 石田 敬三




ブルーの手応え

ーー昨年度の造りでブルー(=純米大吟醸 竜王山田錦)の土壌別仕込も3年目になりましたが手応えはいかがですか?


石田
手応えは想像以上。


ーーおぉ。元々そのお酒の仕上がりについて思い描いてた範囲以上というかこんな感じになるかっていう。


石田
あっ、出来について?


ーーまずは、はい。


石田
酒の出来については特別なことも無いし、どれかに手一杯手をかけてってわけでも無いやん。連続性の中で出来ていく・・・、やから出来についてはその年々の範囲でちゃんと満足出来る範囲かな。

やけど、1個1個の土壌ごとに分けて仕込んだ時の差っていうのは、まぁ知ってるやん。自分自身は。それは想像出来るんやけど。それを世の中に出しても良いんかなってタイミングやから出したんやけど、それを面白がってくれる人が増えたってことについては・・・。


ーー想像以上。


石田
うん。そう。


ーーもっと反響は低いかなって思ってました?


石田
じゃないかなって思ってたよ。だって金沢酵母を18(=きょうかい18号酵母)に変えたら誰でも分かるやん。フレーバーが変わるっていうのは。だからよく米違いとか田んぼ違いするのに酵母変えちゃうわけやけど、それはしたく無かったし。


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曖昧なことを差として楽しむ


石田
(土壌別仕込は)ワインのブドウの品種が違うのとは違ってフレーバーが違うわけじゃ無いから。どっちかっていうと舌触りとかテクスチャーの違いやし、そのテクスチャーって“肌触り”みたいなのと一緒やから・・・。


ーー分かり難くて曖昧といえば曖昧ですかね。


石田
そう。曖昧なことを楽しむとか、それを差として捉えて話題の中に取り込むような状況があるんか?っていうのはあったけど。自分もワインのお陰やと思うんやけど、日本酒飲む人でもそういう風に捉えてくれるようになったってことじゃないかな。


ーーはい。


石田
前はもっと、生かどうか?生原酒かどうか?吟醸かどうか?とか・・・。


ーーええ。味が重い軽い、甘い辛い、分かりやすい味覚の中の話しですよね。


石田
そういう意味ではいろんなテクニック的、製法的な商品の差別化みたいなんが飽和しちゃったから、自分たちが本質やと思ってる米のこととか、地酒にとって本当のローカリティーっていう方に目が向いてて。そこに自分らがものを出せる状況にあるから、どうかなって思ってやてみたら、ちゃんと反応してもらえた。


ーー日本酒の市場として大分成熟してきてるってことですよね。


石田
そうそう。だからむしろその(=酒の)出来について飛び切り良くてもアカンと思ってるんやわ。ブルーに関しては。極端に言うと「これ何で出来たんかなぁ?」みたいな・・・。

ものによってはさ、個人的にきき酒向きやとか、分かりやすくて良いなぁとか思うやん。思うけどそれがブルーに出て来てもうたら本意じゃないよね、やっぱ。


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微細だけど変わりようのないこと

ーーコントロールし過ぎない方が良いってことですか?


石田
えーっと、別に普通の出来で、山田錦の出自が普通に表に出て来てくれんと困るやん。


ーーあぁ、はい。


石田
酒のその出来そのものがウンと抜け出ちゃったりインパクトあるようなものになると。もう、すぐ消えてしまうくらいデリケートであるか無いかわからんようなもんやからなぁ、そもそも。


ーーこの土壌別仕込でやろうとしてるテクスチャーの違いっていうのがですよね。


石田
そうそうそう。


ーーそうなるとあまり印象やアタックの強いものでは逆にダメですね。


石田
そう。そういうコンセプトは楽(=純米吟醸 楽)とかも一緒やけど。

ただブルーに関しては土壌の微細なところを・・・、微細やけど絶対に変わりようの無いことやん。小っちゃいことやけど、ずーっとこれをやり続けたら自分らが仕事辞めたり出来んくなったとしても、何も変わらんと(そこに)あることやん。


ーーはい。


石田
お地蔵さんがそこに居るみたいに。

そやから1年だけポコッと出来るようなもんは実は別に凄く無いけど、ずーっと差が無いことやけど差があって変わらへんもんて強いから。それを素直に出す(=表現する)ことがコンセプトの酒やから。むしろ普通の仕込みで普通に仕上げて・・・。そりゃしくじりたくは無いけど(笑)


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『土から考える松の司』 〜第3話_f0342355_08131551.jpeg



個性の仕立て

ーーこれまで土壌ごとに造り方(=酵母、醪管理など)を全く変えずにその差を見る方向でやって来たじゃないですか。もうちょっとそれぞれの個性が表に出やすいように仕込み方を変えてあげる方向もあるかと思うんですが。


石田
あぁー、そうしたら良いタイミングはもちろんあるんやろうけど、まだもうちょっと全部揃えてやってみようかなって気はするなぁ。この間の『水』の話しと一緒で元ある姿にどう仕立ててあげるかやん。


ーーはい。


石田
土壌をあるべき姿で、その・・・最大限にしてあげることについては間違え無いやん。

細身の米には細身で、ガッチリとストラクチャーのある米にはもっと大きな肉付きをあげた方が良い姿があるかもしらんけど・・・、今はどっちかっていうと細身の人にも体格大きい人にも同じ制服を着せてみて「右の人と左の人違うね」って。

個性っていうことから言うと、自分らのポリシーの範囲内やったら、お約束として金沢酵母で麹の造りはこのくらい、醪の経過はこのくらいっていう・・・、それをちょっとずつ触ってあげて良いプロポーションに合うのが見付かればなぁ。


ーーうーん。


石田
どうしようかなぁと思うところもあったけど、まだ見えてへんて言うのもあって。


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石田
逆かもしらんしなぁ、山中(地区)みたいに細身の砂地の山田錦にフワッとしたんが良いかもしらんし・・・、駕輿丁(地区)みたいに元々ギュッと詰まったやつにもっとタイトにしたんが密度感持って無駄なもん削いで出来るかもしらんし。


ーー筋肉質の人がパッツパツのTシャツ着て身体のライン見せるような感じですね。


石田
そう、そうねん。だからそんなんて何かさ、「こうや!」て思ってやってもアレやから、何となくしようかなと思える時を待ってるって言うか・・・。もしちょっとでも思うところがあったらしてるやん、きっと。


ーーえぇ。素直に見ていきながら、良い仕立ての取っ掛かりが見えたらですね。



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# by matsunotsukasa | 2020-09-25 13:11 | 日記 | Comments(0)

『土から考える松の司』 〜第2話



〜プロローグ〜

これまで自分たちが造っている松の司というお酒について、そこに貫通する“味わい”や“松の司らしさ”といったものを肌感覚で分かってはいても、あまりはっきりとした言葉で表現して来れなかったように思います。

それらを完全無欠の言葉で表現するのは難しいですし、おそらく不可能だとは思うのですが、松の司というお酒を構成するいくつかの要素を深く掘り下げることで、そこに宿る輪郭や独特の空気感をお伝え出来るのではないか?そんな思いからスタートした『○○から考える松の司』。

前回の『水』に続き今回は『土』について掘り下げるべく、「土壌別仕込シリーズ」を軸に当蔵の石田杜氏へのインタビューを行いました。その模様を5話に渡りお届けします。どうぞお楽しみください。



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松瀬酒造 杜氏 / 石田 敬三




ブルーと花伊吹

ーーウチのお酒に使っている酒米は主に竜王町産それと兵庫県産ですが、あらためて竜王と兵庫それぞれの土壌ってどんな土壌でしょうか?お米やお酒への影響も含めて。


石田
前に、「花伊吹」っていう商品があって。ブルー(=旧・純米吟醸 竜王山田錦)をタンク1本、花伊吹をタンク1本って構成やってん。


ーーPBとかじゃなくてウチの商品としてですか?


石田
うん。で、花伊吹は兵庫県の山田錦(精米歩合)50%で、ブルーは竜王の山田錦(精米歩合)50%っていう。

だからその頃から竜王の山田錦と兵庫の山田錦の純粋な比較が出来たわけ。


ーー酵母も造りも一緒だったんですか?


石田
全く一緒。だからその時に50%同士で比べたら、やっぱり花伊吹はムッチリしてるし、竜王の方はちょっとサラッと硬かったりグリップが弱かったんやわ。

それで15、6年前かな、兵庫の田中さん(=兵庫県の旧東条町 特A地区で酒米栽培を行っている「こうせつ・たなか」)とこに田植えに行ったり、1、2週間くらい手伝いに行ってて、さすがにその頃になったら竜王の酒米部会で田んぼ回って見る土と、田中さんとこの東条の特A地区の土が全然違うのが分かるやん。

その頃はもちろん東条(の山田錦)が良いって話やったけど、良いんであればじゃあ何が違うんかっていうのは、「(竜王は)あっ砂がかんでる。砂利が多い。」で「(東条は)純粋な青みがかった粘土」っていう一番シンプルな分け方がその時に出来たかもしらん。


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東条より複雑な土地

ーーその他にも感じる竜王と東条の土の大きな違いっていうのは?


石田
専門家じゃないから実務とか米を使ってる上で言えるのは、やっぱり砂利がかんでるか、純粋な粘土か。あと東条の方はモンモリロナイトっていうもの凄く粒子の細かい陽イオン交換力がでっかい多孔質の土なんやわ。


ーー保肥力、保水力がすごく高い土ですか。


石田
ウチとこ竜王の山中(地区)を例に出したら、もう見た目から白いやん。ジャリジャリしてるやん。長靴で田んぼに入っても、そんなロングの長靴の上から土が入ってくる程じゃないやん。


ーーそうですね。僕も東条に手伝いに行った時、ちゃんとした田植え靴じゃなかったら足がドボンと入って抜けなかったです。


石田
んで、東条は上東条ばっかり行ってたけど、北の一番良い手の少分谷、黒谷、秋津、もうあそこら辺の良いとこばっかり行って言えるのは、谷の方角が違うだけで土はどっこもその粘土なわけ。割合均一にずっと粘土なんやわ。

ところが竜王っていうのは素人目にも赤い土があったり、白い土があったり、平らな沖積土で覆われてる所でもその真ん中に駕輿丁(地区)みたいに粘土が隆起してるとこあったり。

だから実は東条よりも複雑やったってことかな。


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みんなが活きるベクトル


石田
それまでは兵庫を第一義、特A地区を第一義ってしてると、東条の状態からいろんなファクターが外れるだけ品質が劣るってういう話ししかしてへんかったわけ。

「粘土じゃない」で一段落ちる。「中山間地じゃない」で一段落ちる。「琵琶湖の逆水で流れ込む水が温い」でまた一段落ちるってことになるんやけど・・・。これもワインから来る“テロワール”っていうことがあって。みんながボルドー、みんながブルゴーニュのグランクリュになる必要は無いやん。

日本酒もそうで、それまでは「砂やから一段落ちますね」やったら極論で言えば使わんようにしなあかんとかなってしまうんやけど。じゃあ砂の山田錦は何やろうか?竜王なりの平地の粘土の山田錦は何たるか?っていう風にベクトルを変えるとみんなが活きると思う。


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個性が生まれた20年

ーー何年か前に石田さんに連れられて竜王の田んぼ回って「ここの土はこう」「ここはこうやろ」って説明してくれた、あの一個一個の地区の特徴もずいぶん前から掴んでたんですね。


石田
そうそう。それも15、6年前から。世代もあるかもしらんけど昔の年寄りって良くも悪くもようしゃべってくれたやん。「あんたのとこはこうや」とか「俺はこう思う」「俺はそうは思わん」とか。その会話の中で、ここはこう、ここはこうっていうのが分かってくるっていうか。田んぼ回ったら凄い教えてくれたしなぁ。

ほんで自分がここ(=松瀬酒造)に入った20年前くらいが、竜王で山田錦を栽培始めて20年目くらいやったんかな。まだ稲がコケまくってた時からの20年やから、とにかく稲をコカさへんとか兵庫が第一義っていうのがあったんやけど。


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ーーじゃあ、段々とこの20年で竜王で栽培出来るやり方でっていう風にシフトしていったんですかね。そうすると尚、それぞれの個性がそこに出てくる方向ではあったんですね。


石田
うん。だからそれをやっぱり農家の人にも伝えて表に出す方がモチベーションになるし、自分たちのブランドにもなるし。

なんぼ「最高の食材を揃えてます。美味しいでしょ。」の方向を行っても、どこまでも「大間のマグロ握ってます。」なんやけど、この会社とか日本酒っていうのはどこまでもローカリティーを追求する職種やん。


ーーはい。


石田
「最高」っていうのんて基本どれだけローカルなもんかってなると、砂の山田錦を持ってる人がモチベーションを上げられる。ローカリティーを表現するっていうのは自分らが酒に落としてプロモーションすることやし。

赤土のところは一時、米が痩せやすいからやめてくれって言ってたんやけど、また植えて欲しいって言ってるのは、もしかしたら特殊な表現があるかもしらんからやん。農家さんには今更って思われるやろうけど、でも今までみたいに「それ(赤土の山田錦)を表現するようにします。」って言わんかったら、農家の人も生産性も悪いし、(兵庫に比べて)良い山田錦が出来ひん良いか悪いかだけになるし。

等級の1等、2等しか無かったところに、土地を介して、この土地の人が土地と結び付いてるところで、その土地を表現して欲しいっていう。


ーーすごく前向きなベクトルだと思います。



<つづきます>



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# by matsunotsukasa | 2020-09-15 12:05 | 日記 | Comments(0)

『土から考える松の司』 〜第1話



〜プロローグ〜

これまで自分たちが造っている松の司というお酒について、そこに貫通する“味わい”や“松の司らしさ”といったものを肌感覚で分かってはいても、あまりはっきりとした言葉で表現して来れなかったように思います。

それらを完全無欠の言葉で表現するのは難しいですし、おそらく不可能だとは思うのですが、松の司というお酒を構成するいくつかの要素を深く掘り下げることで、そこに宿る輪郭や独特の空気感をお伝え出来るのではないか?そんな思いからスタートした『○○から考える松の司』。

前回の『水』に続き今回は『土』について掘り下げるべく、「土壌別仕込シリーズ」を軸に当蔵の石田杜氏へのインタビューを行いました。その模様を5話に渡りお届けします。どうぞお楽しみください。



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松瀬酒造 杜氏 / 石田 敬三




「米」は「米」、じゃ無い

ーー今回『土』というテーマでお話を伺うんですが、今の松の司を語る上で欠かせない「土壌別仕込シリーズ」を始めようと思ったきっかけって何だったんですか?


石田
元々ワインが好きやし、土壌がどれだけワインに影響を与えるかっていうことにそもそも興味はあるやん。それが大きいかな。

ここに勤め始めた時に、一番最初は精米から入って・・・。まず自分が生まれ育ったところ(=京都)はそんな田んぼが一面に広がってる所では無いし、京都市の街中ってわけじゃ無いけどここ(=竜王町)に来るまでは「米」は「米」やってん。


ーー魚でいうとスーパーのパックに入った切り身の魚が魚みたいなことですか?


石田
んーと、米の品種があることは知ってたけど、もっと小さい中でどこの土地の米が美味いとか、もち米屋はここの農家に限定してるとか。そういう感覚って・・・、聞いたことはあったけど米って日本人にはあんまりにも身近過ぎて、そういうことを知らんかったんよね。

それで、自分がここに来た時はまだこの会社で働いてる人に農家の人たちがいて、「どのそこの米が美味い」とか言うからそうなんかと。新潟とか、滋賀とかは思っても、この竜王町の中でも米の違いがあるんやなって。すごい当たり前のことなんやけど、そこに初めて気が付いたんやわ。


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色味が違う硬さが違う


石田
んで、最初の1、2年は精米担当やったから、昔の機械(=精米機)を触ってると、「米」は「米」のつもりで放り込んでるのに精米時間が1時間とか2時間変わったり。


ーー米の削り上がりの時間が同じ品種でも?


石田
そう。しかも同じ「山田錦の1等」っていうので来てるのに色味が違う。それは何か当たり前の話なんやけど、それが今質問してくれてる“土壌の違い”っていうことの直接の答えじゃ無いんかもしらんけど、京都から来た農家とか全然関係無い男が、同じ竜王町で採れた米に色味が違うとか硬さが違うとか、結構「あっ!」ってなるよね。


ーー考えてみればそうだけど、分かってるようで肌で分かってなかった発見ですね。


石田
うん。でもそういうことっていっぱいあるやん。


ーーそうですねぇ。


石田
自分にとってはその時そうやって。もしかしたらこの会社でも当たり前と思ってること、農家でさえも当たり前やと思ってることが実は“違い”やと見せられるんじゃないかっていうのは芽生えたし。その大元の種はワインやったかもしらんなぁとは思うよ。


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味覚と農作業とのリンク

ーーじゃあ、そうやって土から来る違いっていうのを意識したのは、ここで働き始めて割と最初の頃からだったんですね。


石田
あぁ、でも土壌やろうなぁとは思ったけど、そこまでハッキリとは思って無くて。ただこの竜王町内でも場所で味が違うとかっていう認識が、産地の人にはあるんやっていうのは目から鱗やったけど。

土壌で言うと、今やってるブルー(=松の司 純米大吟醸 竜王山田錦、土壌別仕込シリーズ)で言ってる「砂」「粘土」っていうことを最初に「あっ!これは確かにそうなんや」って思った瞬間は・・・。

あの、何年かまぁそういう山田錦の1等やっても違いがあるっていうのは分かってきたと。んで、味もやっぱり硬い米の方はサッパリ淡白に上がるし、やわらかい米は結構ムッチリ上がるっていうのが・・・。


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ーーそれはお酒の味として?


石田
そう。酒の味として作り分けるように商品によって米を選んで当てがってたから分かったんやけど。それが何でやろうっていうのは、田村仁一さん(=竜王町酒米部会の重鎮)と宴会でしゃべってる時に「駕輿丁の米だけが兵庫に近いんやけど」って言ったら、「あぁ、それはあそこだけ粘土が隆起してんねや」って言われたんやわ。そしたら他の年寄り人たちも「ほうや、ほうや」ってなって。


ーーへぇー。


石田
だから自分は実務として精米の方で、あと味覚上それをそうかなっておぼろげに思ってて。あの人たちは味覚は関係無いところで作業上の現実問題として、駕輿丁のとこだけ粘土が隆起してるって言うから、「あぁーなるほどな」って。それはワインではよくある話やから。

これをちゃんと突き詰めたら酒の種類別として成り立つんじゃ無いかなってのはずっとあったなぁ。


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ーーそれっていつ頃のことなんですか?


石田
もう15、6年前じゃないかな。でもその頃はまだ世の中的にもそんなことしゃべっても誰も聞いてくれへんし、自分もそんな立ち位置じゃ無かったしなぁ。

米が土地によって違いがあるっていうのはあっても、まだ大きくは竜王は竜王、兵庫は兵庫やったから。

だから“土壌別”の元の種はかなり前よね。



<つづきます>



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# by matsunotsukasa | 2020-09-08 16:33 | 日記 | Comments(0)

『松の司のきき酒部屋 Vol.8 〜後編』

『松の司のきき酒部屋』ではサケ・ディプロマ(J.S.A. SAKE DIPLOMA)取得の2人の蔵人が松の司のいろいろな商品をきき酒し、その感想をお届けします。

*サケ・ディプロマとはJ.S.A.(日本ソムリエ協会)が認定試験を行う日本酒に特化した資格認定制度です。

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第8回目のきき酒部屋、後編です。前回のお話の中で“ある綺麗な一本の筋が通っている”とその味わいを形容された『松の司 大吟醸 Ultimus(アルティマス)』ですが、どんな料理とのペアリングが描けるのか?はたまたお酒だけで味わうべきか?3人が導き出した答えはいかに?

泣いても笑ってもこれで最終回。どうぞお楽しみください。





酒だけでも美味い

圭太
さて、ペアリングなぁ・・・。

雄作
大前提として酒だけで飲んでも美味いっていうのはありますからねぇ。


ーー今回ばかりはお酒単体で味わうのがオススメになりますか?


雄作
いや、でも海老、蟹系の刺身は良いと思うかなぁ。

圭太
ボトルデザインと味の雰囲気からすると、フレンチのコースみたいな感じもするかなぁ。何にせよあんまり下手なものとは合わせたくないし。

雄作
香りが強いものとはあまり合わへん気がしますね。

圭太
その・・・、味の芯って言ってる部分がすごく繊細な味やから、下手なものと食べ合わすとそれが分からなくなるっていうか。合わせるなら繊細で軽いものになるんじゃないかなぁ。そこがこの酒の一番の魅力やと思うし。


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ーーこのクラスになると贈答用として使われることも多くなりますし、出来れば贈られた方が飲まれる際にこんな料理と合わせてみたらっていうのがあると嬉しいですね。


雄作
さっきのフレンチの話しであれば、舌平目のムニエルみたいなのとか。9号(=きょうかい9号酵母、熊本酵母)のミルキーなところと、白身の甘い感じと上品なクリームソースはありかも。セオリーだとワインのシャルドネで合わすんやろうけど、これも合うと思いますけどね。


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『松の司 大吟醸 Ultimus(アルティマス)』酒米は兵庫県(特A地区)産の東条山田錦のみを精米歩合30%で使用。酵母は熊本系やきょうかい18号酵母などブレンド。




海老・蟹談義


弘佳
日本の懐石とかやったらどうですかね?

雄作
最初に言ってたやつかな。海老とか甲殻系の甘味は結構合うと思うけどなぁ。例えば純米(=純米酒)みたいなハードなのとは甲殻系合わへんと思うし、マグロとかやったら純米とか良いけどね。もっと柔らかい、酒自体に甘味があるUltimusみたいな場合は、海老・蟹は会う気がするなぁ。


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ーー海老・蟹の場合、あまり調理し過ぎず刺身とかでサラッと?


雄作
エビフライっていうとイメージ無いけど天ぷらとかなら無くはない気がしますけどねぇ。塩で食べる分には合うんじゃないかな。

弘佳
どっちかっていうと冷たい料理の方が合うのかなぁと思って。

雄作
酒自体の温度帯的には冷やして飲むからなぁ。


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圭太
冷製のジュレみたいな?蟹とか入ったような。

弘佳
ええ、テリーヌみたいな。

圭太
煮こごりとか?

雄作
ああ、煮こごりは合うかも。夏っぽいし。


ーーやっぱりお酒の温度に料理も合わせた方が良いですかね?


圭太・弘佳
うん。

雄作
そうやと思いますねぇ。


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お寿司でどうでしょう


ーーこの料理っていうことじゃ無くても、このお酒を飲みたいシチュエーションというか、使い方みたいなものがあれば。


雄作
そうですねぇ。さっき言ってた温度を合わすってのは1個キーワードになるかもしれないですね。普通に合わすなら温度帯は合わせたい。

圭太
寿司とかどう?寿司屋で飲むのにネタを選ばず。


『松の司のきき酒部屋 Vol.8 〜後編』_f0342355_16320455.jpeg
松瀬圭太/37歳、蔵人歴12年目、2019年 J.S.A. SAKE DIPLOMA取得



雄作
寿司良いかもしれませんね。

弘佳
甘エビとかですか?

圭太
いや。この食材っていうよりも、寿司を食べるシチュエーションでUltimusがあったら色んなネタを楽しめる気がする。

雄作
ずっと言ってる事やけど、どれに合わへんっていうのが日本酒はそんなに無いから。寿司みたいに色々な食材をちょっとずつ食べるっていうのは「ペアリング」って言わへんのかも知らんけど、すごい大事かもしれないですね。


『松の司のきき酒部屋 Vol.8 〜後編』_f0342355_18085902.jpeg
築山雄作/33歳、蔵人歴7年目、2018年 J.S.A. SAKE DIPLOMA取得



圭太
そこにコレが1本あったら通しでいけそうな気がするかなぁ。

雄作
20貫それぞれ全部違う酒とか大変ですしね(笑)

圭太
派手過ぎひんし、甘ったる過ぎひんし。

雄作
酢飯の雰囲気にも合いそうやし。

圭太
温度帯も近いし。

弘佳
何か酢飯に近い感じしますもんね。


『松の司のきき酒部屋 Vol.8 〜後編』_f0342355_16354764.jpeg
松瀬弘佳/24歳、次代の蔵元となるべく酒造りに限らず目下勉強中。



雄作
うん。酸もあって甘さもあって。


ーーネタも塩で少し柑橘しぼってとか、軽く炙った香味なんかとも合いそうですね。


弘佳
楽しめるのではないでしょうか。

圭太・雄作
はははっ(笑)


ーー締めましたね。


圭太
お寿司屋さんでこの1本!


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さて、取りにふさわしい松の司の最高峰『Ultimus』と食事とのペアリングについて、いかがでしたでしょうか?昔から日本酒が好きな方も、今のトレンドの日本酒が好きな若い方にもきっと美味しいと言ってもらえる、そんな完成度の高い大吟醸『Ultimus』です。

ちょっと身なりを整えて、少し特別なシチュエーションで、その繊細な味わいを美味しいお料理と共に楽しんで頂ければ幸いです。お寿司屋さんでも是非、試してみてくださいね。

それでは『松の司のきき酒部屋』おわります。



商品紹介:
『松の司 大吟醸 Ultimus』
1.5L オープン価格(希望小売価格 10,000円税別)*専用箱入り
720ml オープン価格(希望小売価格 5,000円税別)*専用箱入り

ご購入はこちらから:特約販売店一覧



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# by matsunotsukasa | 2020-08-04 18:29 | 松の司のきき酒部屋 | Comments(0)