『松の司のきき酒部屋』ではサケ・ディプロマ(J.S.A. SAKE DIPLOMA)取得の2人の蔵人が松の司のいろいろな商品をきき酒し、その感想をお届けします。
*サケ・ディプロマとはJ.S.A.(日本ソムリエ協会)が認定試験を行う日本酒に特化した資格認定制度です。
第7回目となる今回は、ついに松の司レギュラーラインナップの最高峰『松の司 純米大吟醸 黒』の登場です。丁寧な原料処理と小さなタンクでの繊細な醪(もろみ)の発酵管理など、心を尽くして仕込む『黒』。前回の『陶酔』と同じハイクラスの純米大吟醸ではありますが、一体どう違うのか?
今回もいつもの2人に加え、松瀬酒造の次代を担う松瀬 弘佳くんと共に三つ巴のきき酒です。『前編』『後編』に分けてたっぷりと『黒』の魅力をお届けします。
良い酒の予感
ーー今回の『黒』は現行商品のH30BYになります。1年の熟成を経たその香りはいかがでしょうか?
圭太
熟香はするね。嫌味じゃ無く。
弘佳
上品な感じしますね。
雄作
そうやね。カプロン酸(=カプロン産エチル、リンゴの香りに形容される吟醸香の一つ)か分からんけど、甘い果物・・・桃とか、リンゴとか、あぁいう匂い。
圭太
カプロン酸系になるんかなぁ?果実味、熟香、若干のアルコール感。
雄作
炊いた米とかミルクとかっていうよりも果物。
圭太
そやなぁ。吟醸香らしいピュアな匂いって感じがするな。
雄作
熟成の匂いもするけど、爽やかでスッキリするところもあるし。
圭太
雑な香りがせえへんし、透明感があるね。
弘佳
鼻抜けがすごく良いですよね。
圭太
良い酒の予感がする・・・(笑)
派手さは無い
ーーこれまでの商品で多かった香りは酢酸イソアミル(=バナナやメロンの香りに形容される吟醸香の一つ)でしたが、何か分かりやすい系統の香りはありますか?大吟醸らしさとか?
雄作
カプロン酸みたいなのは控えめやけど、僕は何となく感じるかなぁ。
圭太
華やかな香りっていうよりは落ち着いた香りで。もう少し温度が上がるとイソ(=酢酸イソアミル)っぽい感じも出て来るかな?
雄作
スカッとしたイソの感じよりは、もうちょっとおだやかで丸くって。
圭太
大吟、大吟してないっていうか・・・。
弘佳
派手さは無いですよね・・・。
雄作
うん。派手では無い。意図してないっていうのもあるやろうし。熟成してるからってカラメルみたいな香りもせえへんし。そこにちょっとアルコール感がある感じですかね。
ーー圭太さんが始めに言った“熟香”っていうのもカラメルやドライフルーツのような一般的な熟成香では無い?
圭太
そう。フレッシュな香りっていうよりは落ち着いたっていう。いわゆる熟成香では無くてちょっとこなれた匂い。
雄作
老香(ひねか)とか熟成香では無いんですよね。
圭太
うん。そこじゃ無いところでのこなれた感じ。
ーー何か突出した分かりやすい香りは無いようです。そして派手さは無いけれど、丸く落ち着いた果物のような香りが、雑味なく透明感や上品さを感じさせるようで、味わいへの期待値が静かに高まります。
蜜と透明感
ーーそれでは味わいについてはいかがでしょう?
雄作
味の方が熟成してる感じがするかな。若干、粘度とまではいかないけど、舌の上に乗る蜜っぽい感じがする。
圭太
甘みが強いよね。それが蜜っぽいニュアンスになるんかな。確かにトロミみたいな感じも。
弘佳
ちょっとリースリングみたいな感じも・・・。
雄作
もうちょっと酸があっても良さそうやけど、割と酸は低い感じがしますね。なめらかで丸くって。
弘佳
思った以上に華やかでは無いというか、落ち着き払った感じがします。
雄作
そうやなぁ。透明感あるけど味自体は、こう、ポタッというかそれこそ蜜っぽいニュアンスがあって、でもしつこく無くキレがある。
圭太
そうやな。キレがある・・・甘いのにしつこく無い感じ。けどトロミって表現しちゃうと反対の印象になるから、あれなんやけど、トロミっぽい味わいなんやけどスカッとしてるっていうか、“入り”と“出”の時の感覚が違うっていうか・・・。
雄作
熟成してるから丸みがあるけど、米を削ってる(=高精白、精米歩合35%)から透明感が出てるんじゃないかな。
ーーなるほど。
味は多く無いのに複雑
雄作
あとはウチの水っぽさかな。ミネラル感みたいな。
圭太
うん。後口の方で・・・さっきも言ったけど入りとの雰囲気が違うっていう感じがすごくある。
弘佳
鉱物っぽいの思いますよね。
圭太・雄作
うん、うん。
圭太
最後鼻に抜ける感じに軽い渋味のニュアンスも。
弘佳
でもそれがスパイスっていうか、飲み飽きなさにつながる感じがするんですけどねぇ。
圭太
香りもそうやけど、味も落ち着きがあるよね。華やかっていうよりか凛としてる。
弘佳
品があるっていうか、風格があるっていうか。何て言ったら良いのか分からないんですけど、フラッグシップ感みたいな・・・。
雄作
そう。味は多く無いんやけど、複雑さがあるからかなぁ・・・酒自体の。透明感だけでも無いし、華やかだけでも無いし。
ーーそこですかね、品とか奥行きを感じさせるのは。
雄作
うん。味の構成が多いから複雑なんかって言ったら、またそういう複雑さじゃ無い。
圭太
うん。確かになぁ。
雄作
大吟っぽい上品さ、繊細さがある。分かりやすさは無いけど、飲みごたえっていうか。
矛盾してるものが一緒にある
ーー玄人感が強い印象になりますかね?
弘佳
いや、取っ掛かり難さは無いですね。結構受け入れられやすさはある感じがします。
雄作
何か矛盾してるもんが一緒にあるみたいな・・・。蜜みたいな粘度もあるって言いながら、大吟らしいキレの良さもあるし。
圭太
味幅があるような感じやのに、こう、クリアっていう。
雄作
言ってることが矛盾してるみたいに聞こえるけど、それが酒で体現されてるっていう・・・。
圭太
そう、そう、そう。何か不思議な感じ。
雄作
飲んでて派手じゃ無いって言うてても、口に入れたら甘いし広がりも感じるし。
圭太
しかもしつこく無いし、ネバつかへんし。でもチグハグとは違う。
弘佳
バランス良いですよねぇ。
雄作
うん。やっぱり味の構成が多くない複雑さ。陶酔とはまた全然違う感じしますね。酵母構成は近いはずやのに。飲まんと分からん感じ(笑)
圭太・弘佳
うん、うん(笑)
ーーとても良い高級感のように感じますね。
味わいについての話がまとまって来たところで、今回はお開きです。華やかでキャッチーな、いわゆる“大吟醸”という印象とは全く異なる『黒』の味わい。香りもそうでしたが、とてもおだやかで落ち着いた中に、いくつかの相反するような味わいのストーリーが折り重なり、繊細な複雑さと風格を感じさせる逸品のようです。「飲まんと分からん感じ」とはまさにそうなのでしょう。
さて次回後編では、『黒』に合わせたい料理について模索していきます。是非、お楽しみください。
商品紹介:
『松の司 純米大吟醸 黒』
1.8L オープン価格(希望小売価格 9,000円税別)*専用箱入り
720ml オープン価格(希望小売価格 4,500円税別)*専用箱入り
ご購入はこちらから:特約販売店一覧
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by matsunotsukasa
| 2020-06-15 08:33
| 松の司のきき酒部屋
〜プロローグ〜
これまで自分たちが造っている松の司というお酒について、そこに貫通する“味わい”や“松の司らしさ”といったものについて、肌感覚で分かってはいても、あまりはっきりとした言葉で表現して来れなかったように思います。
現時点でそれらを完全無欠の言葉で表現するのは難しいですし、おそらく不可能だとは思うのですが、当蔵の石田杜氏がここ数年取り組んできた“水”と言う観点から何かその裾にでも手が掛かるのでは無いかと感じました。
そこで『水から考える松の司』と題しまして、松の司のお酒全体に共通する“味わい”であり“何か”を、その仕込水から考えてみようと石田杜氏にインタビューを行った次第です。その話は水についてだけには留まらず、“井戸とは” “地酒とは” “理想の味わいとは” というさまざまな思想がふんだんに詰まったインタビューとなりました。
そんな新鮮な記録を3話に分けてお届けします。どうぞお楽しみください。
均整美
ーーウチのお酒って“キレイ” “クリア” と表現されることが多いと思うのですが、今うかがった松瀬酒造の水の質から考えるともう少し重いというか力感やエッジがあるような、若干お酒とのイメージの違いを感じます。
石田
人がキレイという時に、特に日本酒業界でキレイっていうと肉薄で、ゴツいっていう時は味がガッツリしてるっていうのはあるけど、それとは違うところで“均整美” があったとしたら・・・。
水がサラッと流れる細身のキレイさもあるし、割合米を溶かして(=味がゴツく)てもキレイなところがあるから、そういう意味で、こう・・・味をまん丸にはしたいなぁ。違和感の無いっていうか。
石田
若いのに年寄りみたいな人もおかしいし、細いのに肉付きあるような格好しようとしても無理やし。だから自分のところの水とか、テクニックとか、好みに即したカタチで「あの人、違和感無いなぁ」っていうのを。
全体としてキレイって言われるのがベストやと思うけどなぁ。そういう意味でキレイやと良いなぁ。
水って人間でいうと育ちみたいなもんで、育ちがあってそこの骨格に対して肉付きがあって、その全体の肉付きとか育ちに対しての、仕立てとか服とかデザインが出来たら。上品で違和感無いんやけど、他の人と並べた時に「あぁ、あの人やっぱりどの人と並べても違和感無い」っていうか・・・。
ーーえぇ。四角い水を丸く包むことで感じられるような自然なキレイさってことですかね。
偉大な普通
石田
ちょっと話しそれるけど、ワインのブルゴーニュのシャルドネが何でそんなに凄いんかなって思うやん、やっぱり。シャルドネで比べた時にムルソー(=フランス・ブルゴーニュ 地方にある産地)の1級があって、世界で1番有名なシャルドネの良い畑なんやわ。
・・・普通ねん、ホンマに。
造り手も良い造り手で、口の中に入れたら普通ねん。シャブリ(=フランス・ブルゴーニュ地方の最北の地区)の方がやっぱりエッジ立ってたりキャラ立ちしてるし、あともう一つカリフォルニアかどっかのそれも良い造り手やったんやけど。もう1回隣のキャラ立ちしたやつから普通のやつに戻ったら、いつまでも上品に普通なんやわ。
でもただの普通のやつを持って来たら普通のやつはどんどん下がっていく。やけどホンマにバランスが取れてて落とし所を持ってるやつは普通に見えるけど下がらへんのやわ。
石田
だからアレがどんなトレンドになったとしても残る酒なんやと思う、多分。潜在的なポテンシャルはもちろん必要なんやけど、その姿をどう見つけてやるかっていうのがね。
ブルゴーニュなんて数限りなくテクニックを使ってるわけやん。だから世界中が真似するんやけど、やらしいねん。だからテクニックとかそういうもんを「普通やなぁ」って、全部が均整美が取れてるのを追ってくのは歴史も要るし、それを造っていくだけの造り手側の素養やんな。
ーーテクニックっていうのはそういう意味で必要なんですね。何か色を一生懸命つけるとか、特徴的な新しいものを生み出すんでは無くて、ホントにキレイな丸をどれだけ描けるか。どんどん透明に近づいていく技術のような。
石田
やろうと思うよ。何でも言われてる話やけど。
楽茶碗とかもそうやと思うわ、黒楽茶碗。アレは典型で、あんな普通のモワンとしたやわらかい黒だけの茶碗の何が凄いねん?なんやけど何を横に持って来ても下にならへんのやわな。そういうことなんやろうと思う。
ーー・・・偉大な普通。
石田
うん。偉大な普通。でもただの普通じゃ無いねん。自分の持ってるもんへの理解よな。
米に関してはこっち側で色々出来ちゃうから、持って来ることも出来るし。処理をしてるわけやから。話とか論文とかもいっぱいあるやん。ただ水に関してはそんな話が無いからなぁ・・・水は水ってなってしまってるから。
そこについて詰めていけば、何か自分として日本酒についてもっと面白く出来るんじゃないかっていうのがある。
“らしさ”って
ーー現時点で石田さんとしてはその理想のカタチにどこまで近づけてるんですか?
石田
いやぁ・・・一応造ってるからさ。春終わった時点では、現時点での最高到達点やと思ってはいるけど、結局秋ぐらいになったら意外に変わってなかったなぁとか、やり過ぎたなぁとかあるから。
毎年毎年はアレしよう、コレしようってやってみるけど「コレ当たり」っていうのは分からへんからなぁ。一個一個シラミ潰しにしてるつもりやけど一個やったらまた一個出て来るし。
造ってるとやっぱり子供みたいなもんやから。目に見えてるところから出て来て、良くあって欲しいわなぁ。絶対良い奴であって欲しいって思うやん。でも実際はそんなことは無いわけで(笑)。
ーー今回お話を聞いてて、石田さんの中で“松の司らしさ” っていうのは“この味わい”っていうものじゃ無いんですね。
石田
無い、無い、無い。
“松の司らしさ” ってそりゃあったと思うよ。前の杜氏さんとか前の前の杜氏さんの時から。今まで話した中にもあったやろうし・・・。う〜ん、でもこの敷地内でその時々の従業員が一生懸命に造ったら、それが瞬間風速的な“らしさ” やと思うし。
それを超えて何か違うものも造られへんし、そこ超えて造っても良く無いしなぁ。だから、そういうもんを皆んなで担保しあってるのが良いんじゃないかなぁ、多分。
インタビューはこれでお仕舞いです。『水から考える松の司』いかがでしたでしょうか?
今回追い求めてみた“松の司らしさ” やその“味わい” というのは何か特定の個性にあるようでいて、絶えず変化しながらも一つの姿を保とうとする松瀬酒造という渦の瞬間瞬間を捉えた写真に映るようなものなのかもしれません。
自分の蔵の“水”という大切な一つの要素を探求する中で触れた、今この瞬間の松の司を、皆さんにお伝え出来たなら幸いです。
<終わります>
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by matsunotsukasa
| 2020-06-04 07:58
| 日記
〜プロローグ〜
これまで自分たちが造っている松の司というお酒について、そこに貫通する“味わい”や“松の司らしさ”といったものについて、肌感覚で分かってはいても、あまりはっきりとした言葉で表現して来れなかったように思います。
現時点でそれらを完全無欠の言葉で表現するのは難しいですし、おそらく不可能だとは思うのですが、当蔵の石田杜氏がここ数年取り組んできた“水”と言う観点から何かその裾にでも手が掛かるのでは無いかと感じました。
そこで『水から考える松の司』と題しまして、松の司のお酒全体に共通する“味わい”であり“何か”を、その仕込水から考えてみようと石田杜氏にインタビューを行った次第です。その話は水についてだけには留まらず、“井戸とは” “地酒とは” “理想の味わいとは” というさまざまな思想がふんだんに詰まったインタビューとなりました。
そんな新鮮な記録を3話に分けてお届けします。どうぞお楽しみください。
理解してデザインして着せる
ーーこれまで日本酒ってお米にフォーカスされることが多かったように感じます。でも日本酒ってほぼ8割が水で。
今、石田さんのお話を聞いているとお酒を造る際に、真ん中に水の性質があって、お米などの原料で良い支え方をしてあげるようなイメージになるんでしょうか?
石田
女の人で例えたらあれなんやけど、全部体重を測って服以外は8割が人間の裸の体重やからって「8割裸やん」っていうのはそれは違うやん。ブランド物の服着てるあの人ステキやなって思うとして、ステキな理由はその2割の服のせいってそれも違う。
中身のその骨格とか肉付きがあってそこに合うもんがあるから、全体としてキレイなわけで。だから裸だけでも醜悪やし、服だけでもやらしいから。
そう、米だけ、酵母だけの仕立てのテクニックだけやとやらしい。中のその・・・もしかしたら長いスパンで見た“育ち”なんかも知らんけど、そういうものを理解してデザインして着せるっていうのがホンマの造りのあり方やと思うんやけどなぁ。
松瀬の水
ーーウチのお酒を造っていく時のイメージというか、土地を仕立てていくイメージは今うかがったことで良く理解出来たんですが、ウチの水自体の個性というのがどのようなものかうかがいたいです。
石田
一番、日本酒業界で良いってされてる酒の姿は細くて余韻が短くて、口の中の質量が少ないもの。サラッと消えて、口の中をサーっと抜けてくやつ。ウチの水の場合は、入りは軽く入るんやけど口の中でグッと重い。
石田
鶏のササミと脂身を剥いだモモ肉を食べたら、やっぱりモモ肉の方が風味も強かったりするやん。
ーー力感とか重量感はありますね。
石田
高硬度の水とかって分かりやすくって、マグネシウムは苦い、カルシウムはまったりする、んでカリウムは割合塩味っぽいんやと思うんやけど。これは口の中に当たった時に分かりやすいっていうか・・・。
ーー味として捉えやすい?
石田
うん。ウチとこのは硬度は低いから、入りは結構サラッとクセ無いんやけど、後で味じゃ無いところのゴツって骨張ったような、味のカタチとしたら四角っぽいもんが舌に乗る。だから滑らかでは無いよなぁ。
さっき言った隆兵さん(=京都市の桂にある「隆兵そば」)とこの水と比べると特にそう思うわ。硬度が一緒やから余計に。
骨格と肉付き
ーーそれがお酒になった時、味わいとして出て来やすいクセってどんなものですか?
石田
筋肉質なんやと思うよ。純粋に。
男の細い柳肩の人になんぼゴツイ筋肉付けても無理があるやん。それで言うとウチのはやっぱり骨張ってるし。
ーーそれは味わいとしての渋味や苦味とかとはまた違うんですか?
石田
逆に骨格の大きい人を無理に細くしようとすると、やっぱり歪やしギスギスした感じになるやん。
だから米でその肉付きって造ると思うんやけど、ウチの場合、こっち側から肉付きをいっぱい付けてやっても、そんなにダレた感じにならない。細い人に無理に肉付けようとするとただの肥満体みたいになると思う。
石田
前までは、自分が「磯自慢」好きやったり、肉付き細くしようと米の吸水率を下げて、麹もシメてハゼ周り少なくして、麹の力価を下げて味を減らす。米の溶けるのを減らすってしてみたけど、良いことが無かったんやわ・・・。
そうすると苦いから。それは水のせいじゃなくって。
もしそれが細い骨格の水で、肉付き少なくしてやったら、水を飲むみたいにサラッと流れてストレスなく口に入るかも知らんけど、ウチの水は割合飲むのにも体力要るから。それをサラッと飲まそうってのは無理で、飲むのに体力要るけど、それはそれで個性やからそこに肉付きを持たせてやっても良いんかなって。
今はそう思ってるけど。
<つづきます>
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by matsunotsukasa
| 2020-06-03 12:00
| 日記
〜プロローグ〜
これまで自分たちが造っている松の司というお酒について、そこに貫通する“味わい”や“松の司らしさ”といったものについて、肌感覚で分かってはいても、あまりはっきりとした言葉で表現して来れなかったように思います。
現時点でそれらを完全無欠の言葉で表現するのは難しいですし、おそらく不可能だとは思うのですが、当蔵の石田杜氏がここ数年取り組んできた“水”と言う観点から何かその裾にでも手が掛かるのでは無いかと感じました。
そこで『水から考える松の司』と題しまして、松の司のお酒全体に共通する“味わい”であり“何か”を、その仕込水から考えてみようと石田杜氏にインタビューを行った次第です。その話は水についてだけには留まらず、“井戸とは” “地酒とは” “理想の味わいとは” というさまざまな思想がふんだんに詰まったインタビューとなりました。
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同じ硬度でも違う味
ーーここ数年、お酒の味に対する“水の質”について色々と検証されていましたが、どのようなきっかけでスタートしたんですか?
石田
ずっと改良をしていくよね。どうしたら良い酒が出来るかってことについて。ステップ・バイ・ステップで麹について考える、酛(=酒母)について考える、原料(=米)についてはウチの場合もうそこそこ揃ってるから・・・。
結構色々とグルコース濃度とかも含めて“味わい”について手で触れるところは触ったんやけど、出品酒に関してどうしても引っ掛かるクセやテクスチャー、舌触りが出て来るんで水によるところがあるんじゃないかってとこに落ち着いたのが最初かな。
色んなことが同時並行してるんやけど、隆兵さん(=京都市の桂にある「隆兵そば」)とこの水が丁度アメリカ硬度で25mgでウチとこの水も25なんやわ。それで飲み比べてみたら明らかに違うんやわ味が。硬度っていうのは基本的に3つの元素のことでしかないから・・・。
ーー3つの元素・・・ですか。
石田
うん。カリウム、マグネシウム、カルシウム。硬度ってそれらの総量だけの話で。その一個一個の味も実際違うし、硬度だけで話がちやけど、味わいに関して硬度ってあんまり関係ないんじゃないか?ってところから比較してみようって、それがまず一つ。
枯れた井戸
石田
で、その時丁度ウチの井戸も枯れたんやわ。使い過ぎて。
ちょっと話が錯綜するけど、井戸ってなんやろう?って。
水が湧き出るところに龍神さんを祭ったり、蛇を祭ったりする神社が結構あって。水に対して、湧き出ることに対して、その土地に対して信心するやん。お米に関しては日本酒の蔵って、稲は古事記・日本書紀でも言われてるように日本人の身体そのものやっていうので信心してるけど、水に関しても信心してて。
そこについてあんまり考えてなかったんやけど、自分がその、洗い物したり洗濯したり水をいっぱい使ったら井戸が枯れてしまった。井戸って寿命があるし、体力的な能力もあるし、実は生き物なんやなと。
ーー絶えず変動してる生き物ですか。
石田
そう。だからまず水についての理解と、井戸についての理解も進めないとって思って。土地への感謝っていうのと同じで。
思いとしてね、地酒ってものについて、自分が足で踏んでるところから出来てきたものを何かカタチに落として人に知ってもらうってことについて、もし自分とこの水が悪くてもそれを使い切らんと地酒に昇華出来ないんやって思ってて。
自分が井戸を傷めてしまって、新たに井戸を掘ってもらって、そこに信心を込めて社を作ってもらったところから、どう活かすのか。
ーーそれが水に対するもう一つのスタート。
石田
自分とこの個性を知ろうと思うとやっぱり他のとことの比較がないと理解が深まらへんから。よく硬度で言われがちなところを、硬度じゃなくって、誰も教えてくれへん舌触りとかそういうことを自分で比較して醸造してみてやるしかないなっていうのが始まりかな。
大地を舐めてきた味
ーーその舌触りやテクスチャーについて、色々と比較された中でそれぞれの個性の違いってどんなところでしたか?
石田
大きく今思ってるのは、“雨の水”っていうのはホンマにニュートラル。もちろんH2Oに近いやろうし何も入ってない感じ。
雨水をそのまま飲んだのかっていうと、そういうことじゃなくて浅井戸と深井戸の差がまずある。深井戸に関してはミネラルって言って良いんやろうけど、やっぱり何か質感があって、質量として重みとか存在感がある。ウチの場合も深井戸やん。
それって何かって言うと結局“石”なんやわ。
喜多さん(=喜楽長の醸造元 喜多酒造)とこの水がまったりするのはやっぱりカルシウムやろうし、それは海のせいやし。カルシウムは貝殻やから。フィリピン海峡からグーッと海の底が押し上げられて山になってて、そこを水が舐めて来てる。カルシウムが溶けてる溶けてないじゃなくて、何かその石っていうもんに、まぁ大地って言ったらおっきな言葉になるけど、そこを舐めて来るってことからの味。
石田
ここ(=松瀬酒造)やったら花崗岩で、熱変性を受けた硅砂とかがグッと押し固められたその熱にならへん熱がやっぱりあるわけ。
で、隆兵さんとこやったら雨水に近い浅井戸なんやけど、愛宕山の方が硅砂が多くって砥石が採れるくらい。そういう所のは上滑りするくらいサラサラしてる。口の中でサーっと速い。
水は水やって言いながら、結局水は色んなイオンとか塩分、ミネラルとかそういう石の持ってるもんを、エネルギーとか気みたいなもんを持って来る気はする。石が水へ媒介するんやろうなって。
ーーはい。
石田
転じると、じゃあ酒で何を表現しなアカンのかって言うと、表面的には“水”なんやけど、水の個性っていうのは石に転写されたものの溶媒やん。その溶媒に合う仕立てを米で肉付けしてやるっていうのが地酒っていうか、地方の小さい造り酒屋が造っていかなアカンものなんかなって。
ーー土地の味・・・。
石田
うん。土地の味っていうのはそういうことになるんやろうなって。だから、ここに住んで、ここで飲んでるからそれが土地の味なんやっていうのじゃなくて・・・。
華奢な人にゴツい服が好きやからって着せたりとか、すごい骨格あるのに細身の服が好きなんやって、そういうミスマッチがあったらアカンくて。その水が性分として持ってるものと、上に被せてやるものを品良くするっていうのが仕立てなんやろうなって思うんやわ。自分らはどこまでも加工業やから、加工業としてそういう理解がいるんやろうなと思う。
<つづきます>
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by matsunotsukasa
| 2020-06-02 13:54
| 日記
お元気様です。ご無沙汰の管理人Kです。。
この時期、毎年の事なら全国新酒鑑評会の結果発表に賑わう酒屋業界。SNSなどではいろいろなお蔵さんがすでに公表されています。
ただ本年は「結審」と呼ばれる、いわば決勝戦のような審査が行われなかった事から、「令和元年醸造年度 金賞受賞蔵」は無しとなりました。
そんな中「成績が優秀と認められた出品酒」として、入賞酒に選ばれる事が出来ました☆
3年連続、そして4年連続…と思いながら挑んだ年なだけに残念な気持ちでしたが、このご時世。仕方のない事が沢山ある中の一つとして考え、現時点での最高位に居れた事をまずは喜びたいです。飲まれる方すべての「美味しい!!」の笑顔の為。これも一重に皆様のおかげです☆
入賞、金賞…とありますが、獲れたから売れる訳でもなく、獲れたから旨いお酒か。これは全く関係なくて、そこを目指す過程が大事な訳で、良いものを目指す為の技術力。これが肝心☆私はそう考えます。
と、言うことでこの商品、ご購入が可能です。
とても美味しい!!とは、それぞれのお好みがあるので申しませんが、この研ぎ澄まされた弊社の技術力。ぜひ皆様ご自身で入賞レベルのお酒をご堪能頂ければと思います。またこの時期ですので他社様の商品も出回っているかと思います。複数のお蔵さんのお酒と利き比べるのも一興☆楽しみ方は無限大ですね☆
松の司 大吟醸 出品酒2019
精米歩合:30% 使用米:兵庫県産(特A地区)東条山田錦100%使用
アルコール分:17度 日本酒度-1
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by matsunotsukasa
| 2020-05-26 09:00
| 日記